中国・新疆ウイグル自治区のトルファン郊外にあるベゼクリク石窟寺院。ベゼクリクとは、ウイグル語で「絵のあるところ」という意味です。かつて寺院内部は華麗な壁画で飾られていたのです。しかし、20世紀初頭にベゼクリクを調査した各国の探検隊がそこで目にしたものは・・・。寺院は荒れはて、破壊が進行していました。壁画はどんどん失われていたのです。壁画のもつ高い芸術性・宗教性に気付いた各国の探検隊は壁画を自国で保存する決断をします。その結果、貴重な文化遺産は現地から離れてしまいました。
壁画が描かれた当時の様子はどのようなものだったのでしょう。ベゼクリク石窟の始まりは6世紀頃と言われますが、現存する石窟の多くは10~13世紀頃の西ウイグル王国の時代に属します。とりわけ11世紀頃に造られた回廊壁画は特異なもので、ウイグル仏教芸術の白眉といえるものです。
本学では、2001年に開設した「古典籍デジタルアーカイブ研究センター」の岡田至弘・理工学部教授が中心となって、ベゼクリク石窟寺院の中の第15号窟(ドイツ隊編号4号窟)に描かれた仏教壁画のデジタル復元にNHKと共同で取り組み、約1年半の歳月をかけて完成した映像は、NHK新シルクロード第2集『トルファン-灼熱の大画廊』で紹介されました。
今回、その第15号窟の回廊を原寸大で復元展示します。復元する大回廊は、高さ約3.5m、長さ約15mで、「コの字形」になっている実際の回廊を「L字形」とし、約3mの巨大な仏教壁画を9面配置します。ほのかな光で鮮やかに浮かび上がる仏教壁画と対面し、実際にベゼクリク石窟寺院の回廊に入ったかのような体験をしていただきます。